自然の中に、人の暮らしと物語を見つける

環境省が推進する「国立公園満喫プロジェクト」では、日本の国立公園のブランドスローガン「その自然には、物語がある。」のもと、国立公園を単なる自然保護区としてではなく、「人が暮らし、文化や産業などが息づく場」として捉えるプロモーションが展開されています。

そして、2031年に国立公園制度が100周年を迎えることを機に、環境省では「100周年35国立公園物語の発信」事業を立ち上げました。これは、全国34の国立公園に関わる人々への「聞き書き」を通して、自然の中で紡がれてきた歴史・文化・風習を掘り起こし、物語として国内外に多言語で発信する取り組みです。

北海道エリアの物語を描く

ドット道東は、令和6年度業務において、株式会社オールアバウトの協力企業として、北海道の「大雪山国立公園」と「釧路湿原国立公園」の制作を担当。関係者の人選から、コンセプト設計、取材、ライティング、撮影、映像制作、デザイン、編集まで一貫して取り組みました。

釧路湿原国立公園

大雪山国立公園

雲仙天草国立公園・西海国立公園

九州エリア「雲仙天草国立公園」「西海国立公園」についても編集・デザイン・音楽制作業務をサポートしました。

聞き書きで紡ぐ、等身大の自然との共生

本プロジェクトでは、「聞き書き」という手法を用い、地域に根ざした人々の言葉をそのまま記録し、その土地とともに生きる姿を等身大で描きました。

例えば、釧路湿原ではキタサンショウウオの研究者・保全活動家、湿原を見つめ続けた方、観光業に携わる方などが登場し、大雪山ではアイヌ文化を伝える方、山岳ガイド、温泉宿の経営者、かつての大規模林業集落に暮らす方々などが登場します。彼らの言葉からは「守る」や「残す」といった意識だけでなく、日々の暮らしの中で自然とどのように向き合い、共存してきたのか、その等身大の記録が浮かび上がってきます。

釧路湿原国立公園 登場人物

照井滋晴さん
絶滅危惧種キタサンショウウオやニホンザリガニの保全、環境教育に取り組む。

小川清史さん
湿原に魅了され、カヌーを通じてその静けさと美しさを伝えている。

澁谷雄太さん
山の手入れを通じて湿原の保全に貢献。持続可能な林業を模索している。

新庄久志さん
長年湿原に関わり続け、ラムサール条約登録などにも尽力。

佐竹直子さん
地元紙記者として湿原と人のつながりを記録し続けている。

原田香苗さん
湿原の魅力を絵と観光を通じて発信し、次世代に伝える活動を行う。

大雪山国立公園 登場人物

青野範子さん（十勝岳温泉湯元凌雲閣3代目代表）
祖父が開業した温泉宿を継承し、火山と共生する地域で、自然観光と地域振興に尽力。

塩谷秀和さん（大雪山ネイチャーガイド）
12年間の旅の後、東川町に定住。山の魅力とエネルギーを感じる場所をガイドとして案内。

川村久子さん、晴道さん（川村カ子トアイヌ記念館）
川村カ子トアイヌ記念館などを通じ文化継承と豊かな世界観を伝える。

松本宏樹さん（然別湖ネイチャーセンター・ガイド）
鹿追町で自然ガイドとして活動し、ジオパーク推進にも関わる。

大西潤さん（鹿追町役場 ジオパーク推進課）
学芸員資格を持ち、地域と自然をつなぐ活動を推進。

阿久澤小夜里さん（自然・登山ガイド）
カナダの自然ガイドスタイルに感銘を受け、鹿追町でガイド業を営む。

大田 俊斉さん（ラフティングガイド）
世界各地の経験を経て大雪山に移住、石狩川でツアーを展開。

大田 まりさん（ラフティングガイド）
ツアー中の撮影や地域向けピラティス教室も運営。

田中民枝さん、田中康夫さん、田中雪絵さん、宮内博三さん（上士幌町三股地区在住）
林業集落での暮らしを続け、地域の静かな自然に魅了されている。

制作物と担当範囲

・聞き書き冊子（日・英）各公園ごとに制作（日本語版4,000部、英語版1,000部）
・映像コンテンツ（聞き書き記録映像／音楽制作）
・担当範囲：コンセプト設計／構成案作成／人選／取材／ライティング／撮影／編集／デザイン

九州エリア「雲仙天草国立公園」「西海国立公園」についても編集・デザイン業務をサポートしました。

過去の経験を活かして

このプロジェクトは、私たちが過去に制作した阿寒摩周国立公園に関する「自然の郷ものがたり」や日高山脈国立公園の地域住民インタビュー冊子「無二」など、自然と人との関係性を紡ぐ企画制作の蓄積が活かされています。単なる情報発信ではなく、地域に根差した声に耳を澄まし、「その土地にしかない言葉」で物語を編んでいく姿勢は、今後の観光や環境啓発においても重要な価値を持つと考えています。

国立公園に、行ってみよう！

環境省・国立公園ものがたり特集ページでは、PDFで冊子をご覧いただける他、映像コンテンツをお楽しみいただけます。ぜひご覧ください。
▷ 国立公園ものがたり｜国立公園に、行ってみよう！環境省

– MEMBER
協力事業者：株式会社オールアバウト（子上知穂、五十嵐亮太、土居里佳）
Producer：野澤一盛、須藤か志こ
Director：吉田拓実
Editor：吉田拓実、佐々木ののか
Artdirector：鈴木美里
Designer：鈴木美里、青砥美穂子、村上三千雄、加藤舞、西菜花
Writer：阿部光平、中山芳子、春日明子、佐々木ののか、高山かおり
Photographer：渡辺誠舟、坂本明子、梶野健人、野澤一盛
Proofreading：山本小蒔
Video：渡辺誠舟、中道智大
Music：谷翔悟
Coordinate：志水陽平（株式会社EFC）

– CLIENT
環境省

– RELEASE
2025